第4代会長(2008-2011)あいさつ 末廣昭

新会長あいさつ 末廣昭
2008-2011年

2008年7月6日の会員総会で日本タイ学会の暫定会長に任命され、9月6日の臨時理事会で会長に就任しました末廣昭です。2年間、どうぞよろしくお願いします。

日本タイ学会は1999年(設立総会は98年7月)に発足し、ことしでちょうど10周年を迎えます。また、1990年から始まった「タイ・セミナー」の時代を加えますと、20年近い歴史を有する日本で唯一の、タイを対象とする人文社会科学分野の学会です。歴代会長の北原淳氏、赤木攻氏、小野沢正喜氏のご尽力や、会員の活発な活動のおかげで、会員も200名を超える規模に発展しました。日本とタイの関係はアジア諸国のなかでもとりわけ深く、2006年から2007年には「日タイ修好120周年」を祝うさまざまな事業が、日本とタイの両国で実施され、大きな成功を収めました。その様子をとりまとめた記念本は、在日タイ大使館から会員のみなさまの手元に、すでに届いているかと思います(9月17日にタイ大使館より発送済み)。

タイを訪れる日本人観光客の数は、2007年に120万人を超えました。同年にタイに進出している日本企業の数はバンコク日本人商工会議所のメンバーだけで1259社、実際の数は3000社以上といわれています。政治のほうも、タクシン政権の誕生、反タクシン運動とクーデタの勃発、スラユット暫定政権の成立、2007年新憲法の制定、総選挙の実施、サマック政権の発足とサマック首相の失職というように、タイ研究者を悩ませる(喜ばせる?)ような、目まぐるしい変化を続けてきました。

そのため、タイのあれを知りたい、これを知りたいという人々のニーズは、とても強いものがあります。それだけ、日本タイ学会に対する社会の期待もニーズも高いと考えます。微力ですが、日本におけるタイ研究の発展に少しでも貢献し、会員だけではなく幅広い社会のニーズに応えていきたいと思っていますので、会員のみなさまのご協力を心からお願いいたします。

「抱負」というのも大袈裟ですが、会長就任にあたって、次の5つを向こう2年間の活動の柱に据えたいと思っています。

第一は、学会の基本である年次研究大会をますます充実させていきます。2006年の筑波大学、2007年の北海道大学、2008年の一橋大学と、研究大会は年を追うごとに活発になっています。来年は京都大学での大会を予定しています。世代を横断し、より多くの会員が魅力を感じる新しい企画を積極的に取り入れていくつもりです。

Your browser may not support display of this image.第二は、会員の情報交換の場であり、社会への発信の場でもあるホームページ(HP)を、ますます充実させていきます。すでに7月から、HP担当の益田岳さんの努力で、内容の更新と充実に努めてきました。まずは「新しいHP」をぜひごらんください。『年報タイ研究』に掲載した創刊号以降の全論文(同意者のみ:PDF)、国際タイ学会の英文報告書(1996年、2008年:PDF)、過去の研究大会、ニューズレターなどを、すでにアップロードしました。今後は、サーバーの更新とともに、会員のいろいろな著作を紹介するコーナー、会員が関心をもつ情報の伝言板なども、順次開設していく予定です。

第三は、学会の顔である『年報タイ研究』をますます充実させていきます。雑誌の配布が会員に限定されていたために、掲載論文が会員以外の人々の目に触れる機会がないという問題は、掲載論文のPDF化とHPへのアップロードで解決しました。ハードコピーの方も、受け入れを認めていただける大学・研究機関の図書館に順次、バックナンバーを寄贈していく予定です。また、北原淳氏、加藤久美子氏、馬場雄司氏、速水洋子氏などのご協力で行われてきた苦労の多い編集作業も、「編集・書評チーム」を立ち上げることで、より強力でサステイナブルな体制に変えていきたいと考えています。

第四は、学会の組織面での制度化、透明化を進めます。日本タイ学会はすでに10年の歴史をへていますが、組織としては未成熟な面がいろいろとあります。そこで、2008年9月の臨時理事会で「会則検討委員会」(玉田芳史委員長)を発足させました。1年をかけて会則の見直しを行い、200名を超える会員を擁する学会に見合った体制を構築していきたいと思います。また、今回のニューズレターに理事会議事録を収録したのも、学会の活動の「透明姓」を確保するためです。こちらもごらんください。

第五は、学会の財政基盤の安定化に努めます。日本タイ学会は基本的には会員の会費によって、その活動が支えられた組織です。一方、現在の学会の財政収支は「恒常的な赤字体質」です。活動を活発化させれば当然支出が増え、赤字が増大します。とはいえ、若い学生・院生も多い学会では、むやみに会費を引き上げることはできません。したがいまして、まずは会員のみなさまの会費の納入、新規会員の開拓、賛助会員の確保が大きな課題になります。この点をご理解していただいたうえで、会費の納入と会員の拡大にご協力をいただきますように、お願い申し上げます。

来年2009年には、学会が「日タイ修好120周年記念事業」の一環として取り組んでいる『タイ事典』も、内容とスタイルを一新して刊行される予定です(本ニューズレターの柿崎氏の報告を参照)。「タイの政治はさっぱり分らん!」という声もよく聞きますので、場合によっては公開講演会を開催する必要があるかもしれません。若手研究者を中心とする研究発表会も、要望があれば検討したいと思っています。また、タイ大使館、日本タイ協会、日タイ経済協力協会、泰日技術振興協会・泰日工業大学など、タイ関連団体・機関との連携も、できるだけ強化していく予定です。

2008年9月の臨時理事会で事務局も変わりました。事務局を遠藤元さん、財務を遠藤環さん、HP運営を益田岳さんが、それぞれ担当します。若い院生諸君にも、さまざまな形で協力をお願いしています。さらに、新しい執行部の発足に合わせて、日本タイ学会の英語名称も、「The Japanese Society of Thai Studies」から「The Japanese Society for Thai Studies」に変更しました。英語的には[of]も[for]もどちらも正しいそうですが、[of]は「タイ研究者の集まり」、[for]の方は「タイ研究のための学会」というニュアンスが強く、今後の学会のますますの発展を展望して、9月の臨時理事会で[for]に変えました。

最後に、新体制の発足にあたり、面倒な会員名簿の整理や会員の著作一覧の入力などを、東京大学大学院の建井順子氏にお願いしました。この場を借りてお礼を申し上げます。(2008年9月20日)