第7回若手研究会

第7回日本タイ学会若手研究会を11月23日(金)に開催しました。

【期日】2012年11月23日(金)14:30~
【場所】京都大学総合研究2号館4階大会議室(AA447)

【報告1】14:30~16:00

田代亜紀子氏
(奈良文化財研究所 企画調整部 国際遺跡研究室特別研究員(アソシエイト・フェロー)
「東北タイのアンコール王朝期の遺跡からみるタイ文化遺産保存政策―カンボジア、
インドネシアとの比較を通して」

プリア・ヴィヒア遺跡がユネスコ世界遺産リストへ登録された際、タイとカンボジア両国で勃発した領土問題は、広く世界のメディアにとりあげられた。タイ政府による東北タイのアンコール王朝期の遺跡に対する保存政策に注目すると、政府がいかに注意深く、東北タイの遺跡保存に取り組んできたのかは明らかである。本報告では、ピマーイを中心に、地域社会の動きもとりあげながら、アンコール王朝期の遺跡が、いかに「タイの文化遺産」として形成・整備されてきたか、その過程を分析する。 また、独立を通したタイに対し、カンボジアとインドネシアは、それぞれフランスおよびオランダによる植民地政策のなかで大規模な遺跡保存が展開された過去をもつ。本報告では、 これら2か国との比較検討をおこないながら、東南アジア3か国の文化遺産保存政策の共通点と相違の指摘を試みたい。

【報告2】16:15~17:45

高良大輔氏
(東京外国語大学大学院総合国際学研究科地域・国際専攻博士前期課程)
「タイ東北部の行政村を中心とした経済活動と住民主導の地域開発の一考察(仮)」

本報告は、タイ東北部の1つの行政村を取り上げ、そこで営まれている住民の生活を描きながら、近隣の市街地との経済的な関わり方に言及したものである。また、政府が推し進める地域開発と住民が行っている生活改善との間に生じている齟齬を浮き彫りにしようと試みたものでもある。問題意識として、タイ東北部の農村では基盤となる稲作は機械化し、肥料の購入が不可欠となり、農薬使用も増加し、少なからぬ資本が必要となっている。それらの費用や米の売却額は変動が大きく、常に国家や近隣市街地の動向に影響を受けている。また複合農業を営む農家や日雇い労働を行う者は近隣市街地や他県との往来を繰り返している。政策に目 を向けると、第9次国家開発計画(2002-2007年)から、プミポン国王が唱えた「充足経済」(Sufficiency economy)哲学を基本的な考えとして取り込み、地域開発において持続可能な、人を中心とした開発が模索されており、現在でも地域開発の基本的な方針となっている。 これに沿って行われているOTOP政策では、住民の収入増を目指して各行政村に手工芸品 作りなどのモノづくり活動が奨励されている。しかし、多くのモノづくり活動は短期的活動に終始し、住民は次々と新たな活動に乗り換えているのが現状である。上述を踏まえ、行政村を 中心とした経済活動と近隣市街地との経済的な関わり方を考察し、また政府の支援を受けられるモノづくり活動が住民に及ぼす影響を捉え、政府の狙いと住民の意図との齟齬を明らか にすることを本報告の目的とする。

【懇親会】18:00~