日本タイ学会の第3回若手研究会を5月14日に開催しました。
今回は、京都大学大学院(ASAFAS)に今年度入学した竹原さんが、
学部時代に卒業論文で取り上げた南部地域の紛争問題について発表しました。
日 時:2011年5月14日(土)午後3時~5時
場 所:東京大学社会科学研究所1階 第一会議室
出席者:24名
報告者:竹原かろな(アジア・アフリカ地域研究研究科東南アジア専攻修士一年)
「タイ最南部地域の紛争:なぜ終わらないのか」
【当日の様子】
第3回目の研究会は、震災の影響で4月から5月に変更して開催した。学会シーズンでもあり、当初は懸念したが、結果的には多くの参加者があり盛況な会となった。若手の発言も多く、活発な質疑応答が行われた。
竹原氏の報告は、2004年以降再燃、悪化を続けるタイ最南部地域の紛争が、「なぜ終わらないのか」という問いを、紛争の発生要因、紛争に対する政府や軍の対応などを検討することで明らかにしようと試みる。竹原氏が大きく注目するのが軍の予算の増加傾向とそこから生じる利益の問題である。巨額の予算が投下され、大きな利益が生じている一方で、最南部紛争は、軍にとっては相対的にリスクが小さい。そのため、紛争の解決に本格的には取り組もうとしていないと主張する。
フロアからは、様々な質問やコメントが出された。最南部の紛争は、実施主体による声明が出されないことがほとんどであり、実態が明らかになっていない点も多い。そのため、紛争の発生要因や、発表の主題である「紛争が終わらない理由」について、政府と軍の関係、最南部地域のタイにおける位置づけ、タックシン政権以前と以後の変化、犠牲者の状況、南部の利権構造、資金問題など、様々な視点から議論、検討が行われた。竹原氏は、どの質問に対しても、一生懸命、直球での回答を試みており、彼女の意欲的な姿勢が印象に残る、有意義な時間となった。(文責:遠藤環)
さすが、東京外国語大学タイ語学科出身。とても、卒業論文とは思えない、充実した情報に支えられた報告でした。京都大学大学院では「タイのNGO・NPO」の研究に宗旨がえをするとのこと。残念ですが、やむをえないか。懇親会も大盛況でした(末廣昭)